| 平成11年10月16日 |
| 行政改革推進本部規制改革委員会 御中 |
| 青労会会員 |
|
|
|
昨今の新聞報道において、倒産、リストラ関連の記事が掲載されない日はありません。長引く不況、景気低迷により、わが国は未曾有の失業者を抱えています。それを元凶とした凶悪犯罪も多発し、社会は震撼としています。
司法制度の担い手を考える
法は弁護士のためならず、国民のためにある 第一に、弁護士の絶対数が不足しています。弁護士一人が抱える事件の数にはおよそ限りがあり、国民の法的相談者として気軽に依頼できない弊害があります。そして仮に相談を受けることができたとしても、時間がかかる裁判を敬遠して安易な和解へ導かれがちです。結果として、国民の裁判を受ける権利が阻害されています。 第二に、弁護士とて全ての法律に明るいわけではありません。それゆえ、専門外の分野の依頼を受けたが為に、国民に不利益を与えることも少なくありません。民事事件が得意な弁護士もあれば、刑事事件が得意な弁護士もあります。その中でも、特に得意とする法的分野があるのです。これは医者も同じことで内科、外科、神経科、産婦人科等、その専門分野があります。内科医が外科的手術を手がけたとしても、患者が望む成果を得ることは皆無に等しいでしょう。
第三に、弁護士を依頼した場合の費用が高すぎます。一般市民の常識から言って、法外な値段とも言える報酬額がまかり通っています。また弁護士の利益にならない少額事件については、依頼を受けてもらえないことも少なくありません。独占は義務を伴うはずです。したがって義務なき権利は、ただの利己主義といえます。依頼された法的業務を受託するという、義務が果たされていない業務の独占(権利)は、まさしくこれに当たるといえましょう。国民は弁護士の言い値を払うか、依頼を断念するかの二者択一を余儀なくされています。こうした状況は、国民の利益を著しく侵害しているという他ありません。 第四に、弁護士にはエリート意識が強く、クライアントである国民の依頼を親身に聴かない場合が少なくありません。いわゆる、敷居が高いということです。例をあげるに、業務上で被災した労働者が、労災認定された一時金につきこれを不服として何人かの弁護士に相談を持ちかけました。ところか、難しい案件のわりに実入りが少ないためか、その都度相手にされません。そこで被災者は困り果て、最終的に労働法の専門家である社会保険労務士の門をたたいたのです。相談を受けた社会保険労務士は、昨年の社会保険労務士法改正により取得した代理権を行使して、処分庁相手に審査請求を行いました。その結果、原処分は取り消され、被災者は年金を受給できるようになったという事案があります。 第五に、中には事件屋まがいの弁礫士もいるということです。個人的な小さな正義を盾に、大局的な法的思考をしないという人達です。多重債務に苦しむ人を食い物にしたり、人員整理または解雇にあった従業員からの依頼に対しては、人権を前面に押し出して何がなんでも会社側から金銭をむしり取ろうというのもその一つです。士業たる者法的判断に徹し、いかなる場合も独立した立場でことの調整に当たらなければ、真の意味での法の担い手とはいえないでしょう。 このような弊害をみるに、識字率の低かった一昔前ならいざ知らず、高等教育が行き届いた今日では、法的業務を弁護士が独占する理由はどこを探しても見当たりません。 法的業務の分業 国民の権利保護および利便性の向上といった観点から、当然今後は、法律家間の分業を明確にする必要が生じてきます。その分類は、次の3つに大別されるでしょう。 一つ目は、弁護士・司法書士・行政書士に代表される司法枠。二つ目は、税理士・公認会計士に代表される税務枠。そして最後は社会保険労務士に代表される、労働社会保険諸法令枠です。 先の2点については、規制改革委員会での俎上に上っておりますので、小職は3点日に関して、述べさせていただきます。 結論を先に言いますと、労働社会保険諸法令枠に精通する社会保険労務士の効率的活用、及び法律家としの位置づけを今一度考えていただきたいということであります。 わが国は終身雇用・年功序列といった、従来の雇用形態が崩壊しつつあります。また人権意識の高まりもあいまって、リストラ・配置転換をはじめとする様々な労使間のトラブルが、増加の一途です。本年4月の労働基準法、加えて男女雇用機会均等法の改正により、セクハラによる訴訟の増大も見逃せません。 そしてまた、第8回の貴規制改革委員会においては、規制改革を行うことにより、失業を増大させる可能性を指摘されています。あわせて、こうした状況に配慮し雇用保険や最低生活保障等の安全弁を強化することが規制改革の基本であると述べられております。 まだまだあります。来年度に予定されている介護保険、確定拠出型年金401Kの導入。これらを取り巻く様々な摩擦。 このように、今後社会保険労務士が持つ専門知識によるサポートを、国民が必要とする場面が実に数多く予想されます。これを踏まえ各制度導入にあっては国民のニーズにこたえるべく、親身に相談に乗れる身近な法律家を、早急に配することは政府の責任として否めません。 さて、今回の論点公開16項目の見直しにおいて、司法書士、弁理士及び税理士については、訴訟代理権等を付与するという内容が検討されます。その大きな理由は、法律家が専門分野につき、最初から最後まで一貫して処理に当ることこそが国民の権利保護及び利便性の観点から重要である、というものであります。これは法律家間の分業といった視点から、間違いなく前進と評価されましょう。なぜなら、弁護士以外の士業についても法的判断が下せることになったからです。 しかしながら、混迷が予想される労働社会保険諸法令枠に関しては、いったい誰が法律家としての手腕を発揮することになるのでしょうか? 今回の訴訟代理権等を付与するとの論点に、この法律分野の担い手であるはずの社会保険労務士が含まれていないことは、国民的見地からして、片手落ちの感がぬぐえません。 社会保険労務士の活躍 訴訟代理権等を付与に、どうして社会保険労務士が含まれなかったのか、一般の社会保険労務土にはその経緯を知る由もありません。が、連合会一幹部の認識不足によることが原因だとしたら、これは慙愧に絶えません。 社会保険労務士の中には、市民の権利保護を目的に、自らを身近な町の法律家と称し、日夜研錯している者も数多くいます。その代表として、河野順一氏を会長とする全国青年社会保険労務士連絡協議会があげられます。前述の実例に加え、ここに氏をはじめとする、会員が手がけた活躍の一部を紹介しましょう。 まず、内縁の妻という理由だけで、本来ならば遺族厚生年金を受給可能な妻に出された、年金不支給の決定を覆した事案。あきらかに業務に起因する脳出血による死亡にもかかわらず、労災認定されなかった者の決定を変更させた事案。労働能力なしとして不支給決定を受けた、完全失明者に失業給付金を認めさせた草案。その他障害厚生年金の受給における精神障害者の初診日を巡って、審査請求により初診日を厚生年金被保険者期間中であったと認定させた事案。(注:被保険者期間の初診日でなけば、障害厚生年金は受給できない。) このように、社会保険労務士は市民の味方として真実を追究し、法律家としてふさわしい数々の実績が認められます。 今後、社会保険労務士にも司法書士や税理士同様、訴訟代理権が付与され法律家としての位置づけが明確化されたならば、これまで以上の町の法律家としての活躍が期待できるといえましょう。加えて、河野順一氏が貴委員会宛てすでに提出してある意見書中、社会保険労務士の労働争議不介入条項撤廃が実現される運びとなれば、一層の国民の利便性向上につながります。 これまで行政等の庇護のもとにあった市民生活が、自己責任と競争原理とを直接問われることとなる時代に、身近な労働法・社会保障の相談者たる社会保険労務士の適切な活用方について、国民的見地から再考していただきたく、重ねて要望するものであります。 |