平成14年1月16日
税理士法改正の検証及び意見

全国青年社会保険労務士連絡協議会事務局
1 背 景

  今回税理士法一部改正の成立(成立日:平成13年5月25日 公布日:平成13年6月1日 施行日:平成14年4月1日)に伴い、社労士会が大いに揺れている。その理由は、ことの経緯が連合会から情報公開されなかったことに加え、今年4月より創設される税理士法人に付随業務として社労士の業務を行わせるとした記事が、日本税理士会連合会監修、ぎょうせい発行の「速報税理士」に、昨年10月21日号ならびに11月1日号に掲載されたこと。また、同旨の内容が国税庁のHP、日本税理士会連合会HPに掲載されたことにより、青労会岩井常任理事が社労士連合会に対し質問状出したこと、青労会の掲示板でこの問題が大きく取り上げられたことによる。
 そして年が明けた、平成14年1月8日、連合会長名で各県会会長宛て出された第2回協議会の概要が明らかにされた。

2 資 料

 国税庁ホームページの内容
http://www.nta.go.jp/category/topics/data/h13/21/01.htm
平成13年10月・国 税 庁

改正税理士法のあらまし

 経済取引の国際化、電子化・情報化の進展に伴い、税理士に対する納税者等の要請が複雑化・多様化する中で、規制緩和の要請を踏まえつつ、納税者利便の向上に資するとともに、信頼される税理士制度の確立を目指す観点から、税理士法が改正されました。(法:税理士法、令:税理士法施行令、規:税理士法施行規則)

 従来の税理士個人で開業する業務形態に加え、税理士法人や補助税理士という新しい業務形態が創設されました。

1 税理士法人制度の創設
  従来、税理士が個人として行うこととされていた税理士業務を新たに法人形態でも行い得るよう、税理士法人制度が創設されました。その主な概要は次のとおりです。
  (1)  税理士が共同して税理士法人を設立することができることとなり、その場合の社員は税理士でなければならず、また、その名称中に「税理士法人」という文字を使用しなければならないこととされています。(法48の2、48の3、48の4??)
  (2)  税理士法人は、税理士業務のほか、定款で定めるところにより税理士業務に付随する会計業務などや税理士業務に付随しない会計業務などが行えることとされています。(法48の5、規21)また、社会保険労務士法施行令において、税理士法人も税理士業務に付随して社会保険労務士業務が行えることとされています。(令附則?)
  (3)  税理士法人は、設立の登記によって成立し、その旨を日本税理士会連合会に届け出なければならないこととされています。(法48の7、48の9、48の10)また、税理士法人は、成立の時に税理士会の会員となります。(法49の6)なお、税理士法人は、従たる事務所(支店)を設けることもできます。
 (4)  税理士法人の社員は、すべて業務を執行する権利を有し、義務を負うことととされています。(法48の11)
  (5)  税理士法人の事務所(従たる事務所を含む。)には、その所在する地域の税理士会の会員である社員を常駐させなければならないこととされています。(法48の12)
  (6)  税理士法人の社員には、税理士法人の業務との競業禁止規定が設けられています。(法48の14)
  (7)  税理士法人は、社員が一人になった場合には原則解散することとされています。(法48の18?)
  (8)  税理士法人には、合名会社に関する商法の規定(連帯無限責任、代表権等)等を準用することとされています。(法48の21)

3 税理士法一部改正の関連条文整理

(1) 税理士法関係
 a 税理士法第2条第1項・第2項【税理士業務】
 b 税理士法第48条の5【税理士法人業務の範囲】
 c 税理士法施行令 附則第3条
  【平成13年10月17日税理士法の一部を改正する政令第330号・財務省】

(2) 社労士法関係
 a社労士法第27条【業務の制限】
 b 社労士法施行令第2条【 業務の制限の解除】

(1)−a 税理士法第2条第1項・第2項【税理士業務】
                     注:条文中、赤字は、今回の改正箇所。以下同じ。
第2条  税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法(昭和25年法律第226号)第13条の3第4項に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう。)、法定外目的税(同項に規定する法定外目的税をいう。)その他の政令で定めるものを除く。以下同じ。)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
(1) 税務代理(税務官公署(税関官署を除くものとし、国税不服審判所を含むものとする。以下同じ。)に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法(昭和37年法律第160号)の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(これらに準ずるものとして政令で定める行為を含むものとし、酒税法(昭和28年法律第6号)第2章の規定に係る申告、申請及び不服申立てを除くものとする。以下「申告等」という。)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(次号の税務書類の作成にとどまるものを除く。)をいう。)
(2) 税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類で財務省令で定めるもの(以下「申告書等」という。)を作成することをいう。)
(3) 税務相談(税務官公署に対する申告等、第1号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等(国税通則法(昭和37年法律第66号)第2条第6号イからヘまでに掲げる事項及び地方税に係るこれらに相当するものをいう。以下同じ。)の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。)

2 税理士は、前項に規定する業務(以下「税理士業務」という。)のほか、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる。ただし、他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については、この限りでない。

3 前ニ項の規定は、税理士が他の税理士又は税理士法人(第48条の2に規定する税理士法人をいう。次章、第4章及び第5章において同じ。)の補助者としてこれらの項の業務に従事することを妨げない。

(1)−b 税理士法第48条の5【税理士法人業務の範囲】
 税理士法人は、税理士業務を行うほか、定款で定めるところにより、第2条第2項の業務その他これに準ずるものとして、財務省令で定める業務の全部又は一部を行うことができる。

(1)−c 税理士法施行令 附則第3条
 社会保険労務士法施行令(昭和43年政令第327号)の一部を次のように改正する。
 第2条第2号中「税理士が」を「税理士又は税理士法人が」に改める。

(2)−a 社労士法第27条【業務の制限】
 社会保険労務士でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務を業として行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りでない。

(2)−b 社労士法施行令第2条【 業務の制限の解除】
 法第27条ただし書の政令で定める業務は、次に掲げる業務とする。
 1 公認会計士、会計士補又は外国公認会計士が行う公認会計士法(昭和23 年法律第103号)第2条第2項に規定する業務
 2 税理士が行う税理士法(昭和26年法律第237号)第2条第1項に規定する業務

4 社労士連合会の税理士の付随業務に関する認識

 月刊社労士12月号(4ページ)には、税理士連合会・社労士連合会の第一回の協議会で話された社労士会の見解の大要が記載されている。
「付随業務に関する税理士業務とは、税理士法第2条第1項に規定されている税務代理、税務書類の作成および税務相談であり、これらに付随する社会保険労務士業務は、税理士業務に必然的又は不可避的随伴又は包含して行われる労働社会保険諸法令に基づく書類及び帳簿の作成であり、例えば、税理代務の際に経費の計算書を添付するために労働社会保険関係の書類を作成する場合に限られる。したがって、税務業務に密接な関係がある周辺業務だからといって、付随業務にはならないし、書類等の提出代行や事務代行が付随業務にならないのは当然である。」
 これと同様の趣旨が、社労士連合会・平成9年3月1日刊の「社会保険労務士法詳解」(P259〜P261)に記されている。そして、この例外規定が社労士法に盛られたいきさつには、次の背景があるとしている。
「税理士、公認会計士等は、その本来の業務である税務書類、財務書類等の調整に関連して労働社会保険諸法令に基づく書類、帳簿等を作成してきた実態にあったので、昭和43年の本法(社労士法)の制定に際し、それらとの調整を図るためにこれらの者が本来の業務に付随して行う場合には、本状の業務制限に触れないものとされた。」
 
5 考察

 条文を読むに、現在の税理士が行える付随業務とされる範囲で税理士法人にもその業を行わせるという内容にとどまっている。現行法に規定された税理士がその付随業務として行える業務は、税理士法(昭和26年法律第237号)第2条第1項に限定されており、実態としては、その具体的な例示をすることができない。換言するならば、法制定時の既得権を尊重するかたちで、法的根拠を言明しない暗黙的了解に留めた規定としたのである。
 したがって、今般「税理士法人」が社労士法施行令第2条に加わったからといって、実務においては従前と何ら変わらない状況にあったはずである。社労士法施行令第2条を改正しない限りは、税理士法人といえども実質的な付随業務はできない。しかるに、税理士会は個別的具体的な付随業務の盛り込みについて、社労士法施行令第2条の改正を迫ったのである。既製事実でこれまで行っていた業を条文により、明確にする意図があった。
  今はまだ、覚書を結んだ段階である。法的には税理士又は税理士法人の付随業務につき、個別的な例示を社労士法施行令に規定する義務はないと解する。

以 上