平成14512

全国社会保険労務士会連合会

    会 長 大 槻 哲 也 様

                                           全国青年社会保険労務士連絡協議会

                                   会 長 河 野 順 一


税理士又は税理士法人が行う付随業務の範囲に関する確認書

に関する一考察


 平成
14422日、全国社会保険労務士会連合会は日税連との間で、懸案であった「社労士業務における税理士法人等が行いうる付随業務の範囲」が決着したと、そのホームページに報じた。この内容につき、以下に考察を試みる。

  記

1 はじめに

 WTOをはじめとする外圧の影響下、昨今国内においても、にわかに規制緩和の動きが慌しく現実味を帯びてきている。規制緩和の意義は、一つには自由な価格競争の原理を導入して経済を活性化することであり、そのためには法律等で規制されている独占の垣根を取り払い、自由参入を可能にすることである。
 われわれ”士業”においても例外ではない。具体的には、個別的な業を行うことが法律等で規制されている場合、その規制を緩和して垣根を取り払い、他士業からの参入を自由にするということである。
 この件に関して当職は、予てから国民の利便性を阻む業務独占を規定した「弁護士法第72条」についてその弊害を指摘してきたわけだが、今回、税理士との間で同種の規定とされる「社労士法第27条」及び「税理士法第52条」の業務範囲についての問題がクローズアップされた。
 そもそも、日本社会には法律専門職たる”士業”の種類が多すぎる。その背景には、時々の為政者と業界の利害関係が一致を見たとき、新たな資格が次々と世に誕生することとなった経緯がある。その結果、各士業が業として扱える法律が細分化されすぎ、職域が極めて不明確となった。これは数学の「集合」で言うところの重なりの部分であり、どちらの士業が行っても構わないとされていたグレーゾーンの部分である。このグレーゾーンについては、その都度士業間で争いが絶えないところであり、すっきりしなかったのは事実だ。これは、利用者である国民の側からしてもどちらに依頼して良いのか、はたまたそれぞれに依頼しなければならないのかと、非常にわかりづらかったはずである。
 こうした”士業”の規制緩和を進めるには、特別な専門知識を必要とせず、誰にでもできる内容(反復継続するうちに、一般的な教育を受けた者であれば誰でもが行いうる簡単な業務、例えば簡易な書類作成や届出等の手続き事務)に関しては、業務独占の垣根を低くするか、あるいはまったくなくすべきのどちらかである。そうすることにより、士業間では良質なサービスの提供についての競争が生まれるのだ。
 ただし、この「誰でもが行いうる簡単な業務」の開放は、どこか特定の士業が一方的に開放するだけではなく、相互乗り入れが条件とされなければならない。またこの機に乗じて、特定の士業が一方的に職域侵害をするようなことがあってはならない。
 なぜなら、各士業は日本国憲法のもと、各士業を定めた法律に基づいて業を行っているのであり、士業に優劣はなく同等だからである。

2 規制改革に関する連合会と青労会の考え方

 本題へ入る前に、ここで規制緩和に対する青労会の考え方を確認しておかなければならない。
 なぜなら、昨今インターネット上で一部の方により、青労会が予てから主張している意見を曲解し、一般に喧伝されているからである。その主張によれば「青労会は、これまでの社労士独占業務をそのままに、付随業務として他士業の分野へ職域の拡大を図ろうとしている。」としているが、それは事実ではない。青労会は一貫して、「単純な書類作成業務については特に社労士に業務独占をさせる必然性はない。専門性を有さない簡易な業務については、士業間の相互乗り入れを実現すべきである。」と主張している。
 これまで青労会が発表した数多くの意見書、並びに当職が上梓した「司法の病巣弁護士法72条を切る」等の書籍を熟読玩味していただければ、その意とするところが自ずからわかるはずではあるが、本考察をするに当たり、先入観を捨てていただかないと物事の本質が見えてこない。
 よって、事実関係を客観的に判断する材料として、規制改革に対する連合会と青労会の考え方の相異につき、端的に理解できる『行政改革推進本部規制改革委員会業務独占資格制度に関する調査』をここで取り上げることとする。

1)『行政改革推進本部規制改革委員会業務独占資格制度に関する調査』提出の経緯について
 青労会では、去る平成11年10月、行政改革推進本部規制改革委員会にあて、『行政改革推進本部規制改革委員会業務独占資格制度に関する調査』を提出した。俗に「規制改革に関する16項目の調査書」といわれたものである。
 その調査は、法定団体とされる連合会に対して行われたものであったが、青労会では連合会の回答を補完すべく別個に回答したいきさつがある。当時、青労会からの回答書の提出を受け、政府の行革委員が本会事務局に訪れ、連合会の回答書では掌握できない社労士の社会的役割、実態につき詳細に聴取した事実も申し沿えよう。裏話をすれば、その際、「業界として、なぜ早い段階で規制改革委員会に実態を主張されなかったのか。事前に連合会で調査した感触では、業界としての積極的な意思は感じられなかった」との指摘があった。

2)資格間の相互乗り入れを検討について
 さて、話を戻すが、その際青労会がおこなった主張は現在も一貫している。前述、16項目の調査書の第一番目に次の質問事項がある。


 業務範囲が余りに細分化されている資格については、業務範囲の見直し、資格間の相互乗り入れを検討する。
また、業務独占資格者の業務のうち隣接職種の資格者にも取り扱わせることが適当なものについては、資格制度の垣根を低くするため、他の職種の参入を認めることを検討する。


これに対し、青労会は以下の回答をしている。



【青労会の意見】

 現在の社労士業務のうち、単純な書類作成業務については特に社労士に業務独占をさせる必然性はない従って、こうした分野は他の資格を持つ者に開放することも検討されてよいだろう。
 ただし、単純な業務とはいっても、企業や個人のプライバシーに係るものを扱うことが多いので、守秘義務を持つ一定の者でなければ国民の利益を損なうことになる。この点で、無制限な業務の開放はできないといえる。
 また、現在の資格制度があまりに多岐にわたって国民が利用しづらくなっているという批判も聞かれる。そうであれば、最低限憲法に根拠を有する3大資格を残してのこりを統合するというのも一つの手である。
 すなわち、

生存権(第25条)…社会保険労務士
納税の義務(第30条)…税理士
裁判を受ける権利(第32条)…弁護士

の3つを憲法は求めているのである。
 残りについては、例えば「行政代理士」という一つの資格に統合し、基本的にあらゆる業務を行えるようにすればよいだろう。場合によっては社会保険労務士と税理士もこれに含まれてよいだろう。
 現行の制度を維持するのであれば、社会保険労務士に訴訟代理権と労働争議の介入権が認められねばならない。


 労働争議不介入条項の根拠として「公平・公正」という言葉が金科玉条のごとく使われてきたのだが、既に時代の流れに遅れてしまっているということを改めて強調したい。
 三ケ月章教授は、著書「法学入門」の中で『西欧では伝統的に、法の運用に携わるという社会的により高い価値をもつ仕事をProfessionと呼び、単に生活の手段を供するにすぎない職業を指すOccupationとは区別してきた。このように、法に携わる階層は、特別な扱いと尊厳を受けてきた。』と述べておられる。

 すなわち、法律家たる者、単に顧客の利益を追求するだけではなく、法体系の啓蒙等を含む社会的責任を果たしてゆく義務を負っているのである。またそうして初めて存在意義が認められるということからも、今後一層社会保険労務士が積極的に社会的責任を果たしていくことが必要である。そのためには、まず社会保険労務士を規制する不条理な規定(労働争議不介入を定めた社会保険労務士法第23条、訴訟代理権の独占を規定した弁護士法第72条)の撤廃が求められよう

 さる10月14日の資格制度の見直し状況に関するヒアリングにおいて、厚生省の植村課長が社労士の労働争議について否定的な意見を述べておられた。いわく、「労働争議に介入すると、労使のどちらかにつくことになるが、公的資格を持った者が一方につくと公平性を欠き、事案がさらに複雑化するおそれがある。」とのことである。これは、現代においては全くナンセンスな理屈でしかない。確かに法制定時には一部の「事件屋」がいたずらに労使の紛争をあおりいくばくかの金を手にしていたという経緯がある。また、高度経済成長を達成するまでの過程において資本家が労働者を搾取し、話し合いによるによる解決も難しかったということもあっただろう。しかしながら、現在では資本家(経営者)が一方的に労働者を搾取すると事業自体がたちゆかなくなることを経営者はよくわかっている。それ故にまず話し合いでお互いが納得できる努力を行うのだ。こうした状況の中で、社労士がいずれかの一方の利益のみ優先させて関与するということはまず考えられない。仮にこういうことをする社労士がいたとすれば、労使双方の信用をなくし、すぐさまその場から放逐されるだろう。むしろ、昨今の労使紛争はお互いの法の無知から発生するケースが多く、適切なアドバイスをしてくれる第三者を望んでいるのだ。そして、この役割を果たすことができる者こそ、その事業場の内情をよく知り、労働社会保険諸法令に精通した顧問社会保険労務士なのである


 現在、労使紛争が裁判に発展して弁護士をそれぞれの代理人におくという状況がみられるが、裁判になると莫大な金と時間がかかるため極力回避すべきである。この紛争防止に社労士の日頃の労務管理が重要になってくる。また、不幸にして訴訟が避けられなくなった場合でも、弁護士は「高い・遅い・いばっている」との批判が絶えず、普通の国民が利用するには極めて不便である。資本主義の世界ではこんなものにはとうてい商品価値などみとめられないだろう。識字率の低かった一昔前であればいざ知らず、これだけ高等教育の発達した現代では、誰でも一応の事件処理は可能なのである。弁護士法第72条の独占規定は既に歴史的役割を終えたのだ。そこで、身近な法律家である社会保険労務士が代理人として求められるようになるのである。無論、現在弁護士が持っている訴訟代理権と全く同じものを要求するのではなく、司法書士が要求しているものと同じレベルの訴訟代理権を我々も要求するものである。


 以上の論旨は9月28日送付の意見書及び10月4日送付の「労働争議と労使紛争における社会保険労務士の果たすべき役割」、「憲法と社会保険労務士」に記載してあるのでそちらを一読いただきたい。


 平成11年当時の社労士会では、1号2号業務の独占堅守が当然とされ、業務開放の主張はタブーであった。その中で、青労会は『現在の社労士業務のうち、単純な書類作成業務については特に社労士に業務独占をさせる必然性はない。』と言いきっていたのだから、いかに周囲からの風当たりが強かったかはご想像にお任せする。また、国民の利便性から考え資格の統廃合についても言及している。けっして、社労士のエゴを前面に押し出した主張でないことを理解していただきたい。
 一方、同じ質問に対し、連合会はどのような回答を提出していたかを比べてみたい。


【連合会の意見】

 社会保険労務士制度は、第2次大戦直後の混乱期に制定された労働社会保険諸法令の順守のために相談指導を求めた民間企業の要請により生まれ、その後わが国の経済社会の成長に伴う企業の需要に応じて発展してきた制度であり、将来にわたる大問題である医療、年金、介護について専門的に取り扱う点で、少子高齢社会における国民生活を支える最も重要なものとなっている。現在、労働杜会保険に関わる法令・制度は複雑多岐化し、非常に専門的になっているばかりでなく、この業務を行うには約50に上る労働社会保険諸法令に精通し、かつ、十分な専門的知識経験を持つとともに不断の自己研鎖が必要となっている。したがって、このような条件を満たさない者の参入を認めることは国民に不利益を与えることとなり、不適当である。なお、社会保険労務士の業務を完全に果たすためには、さらに社会保険労務士法上の規制である労働争議不介入の原則の撤廃、労働社会保険に関する事件の訴訟代理の遂行、個別紛争解決への参与等の職域の拡大(これらについては、おって別紙をもって提出予定)が必要とされ、社会保険労務士業務のますますの専門化が期待されている。

 
 これを読む限りでは、業務開放はおろか、1号2号業務の独占堅守並びに職域拡大の必要性を説き、社会保険労務士業務のますますの専門化をアピールしている。まさに当時における業界の認識が、そのまま凝縮された意見である。
 以上、連合会と青労会の、規制緩和に対する認識相異の事実を前提として、ようやく本題である税理士又は税理士法人が行う付随業務の範囲に関する確認書」に関する考察が行える。
 一連の、税理士又は税理士法人が行う付随業務の範囲については、平成13年11月から社労士・税理士双方の代表が5回の協議を重ね、今回の確認書合意に至ったわけである。その内容を俯瞰するに、一見、表面上はこれまでと何ら変わりなく、むしろ社会保険労務士法第2条第1項第1号の2の業務(提出代行)及び同項第1号の3の業務(事務代理)は、付随業務ではないということをうたったことにより、業務独占が強化されたかのごとく見える。しかし、その実よくよく考察すると、社労士側が一方的に業務開放を強いられた内容となっている
 なお、青労会としては、専門性を有さない簡単な部分の業務独占に関する士業の相互乗り入れについては予てからの主張どおり賛成するものの、連合会の立場と異なり、社労士側の一方的な業務開放は容認できない。また、年末調整に関する事務については、社労士が業として行うことは合法であり、当該業務を税理士法違反とする確認書を受け入れるわけにはいかない

3 確認書の内容

 まず、確認書の内容を記しておく。

 全国社会保険労務士会連合会及び日本税理士会連合会は、社会保険労務士法第27条ただし書及び同法施行令第2条第2号に基づく付随業務の範囲に関する協議において、下記のとおり意見の一致をみたのでここに確認する。

                                記

1 税理士又は税理士法人が社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務を行うことができるのは、税理士法第2条第1項に規定する業務に付随して行う場合であること。

2 (1)上記1にいう税理士又は税理士法人が付随業務として行うことができる社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号まで に掲げる事務は、「租税債務の確定に必要な事務」の範囲内のものであること。
  (2)社会保険労務士法第2条第1項第1号の2の業務(提出代行)及び同項第1号の3の業務(事務代理)は、付随業務ではない こと。

3 付随業務に関して疑義が生じた場合は、その都度、全国社会保険労務士会連合会と日本税理士会連合会との間で協議の上、解決を図ることとする。
  なお、年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が当該業務を行うことは税理士法第52条(税理士業務の制限)に違反する。        

                                                 以  上

                        


4「租税債務の確定に必要な事務」とは

(1) 確認書の付記事項

2 (1)上記1にいう税理士又は税理士法人が付随業務として行うこと ができる社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号まで に掲げる事務は、「租税債務の確定に必要な事務」の範囲内のものであること。


 確認書には、税理士又は税理士法人が行い得る付随業務の範囲として、「租税債務の確定に必要な事務」と特定されている。なお、これに関して『「租税債務」(税法上では、租税債務を「納税債務」という。)とは、納税義務者が国または地方公共団体に税金を金銭給付すべき義務をいうと解されています。』との追記がある。
 それでは、社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務のうち、「租税債務の確定に必要な事務」とは、具体的にどのようなケースが想定されるであろうか。
 
(2)毎月の給与計算から…源泉所得税額の確定

 たとえば、社労士に馴染みが深く税理士にも関係があるとされる業務に、事業所における毎月の給与計算業務がある。各論に入る前に、当該業務を士業が守備範囲とする法律で厳密に業態の住み分けをしたならば、どのようになるかを考えることにしよう。
 まず、「賃金」を守備範囲とする社労士が当月の給与計算を行う。労働保険料並びに社会保険料の数字が確定したところで、次に、「税」を守備範囲とする税理士へ、源泉徴収税の業務を依頼。最後に、源泉徴収税額が確定したところで、再び社労士が税理士からこれを引継ぎ、給与支払明細書等を作成の後(労働債権の確定後)、労働者への支払事務を行う手順を踏む。
 しかし、法はここまでの厳密さを要求していない。これではいたずらに業務が煩雑になり、ロス時間を要するだけで、顧問先の士業への業務依頼というメリットが減殺される。したがって、誰でもができる2士業が携わる業際の部分は、士業の双方どちらが行っても良い部分として、これまで暗黙の了解があったのだ。
 さて、ここからが今回の確認書でキーワードとなる、「租税債務の確定に必要な事務」の解釈である。
 労働者の給料から徴する源泉徴収税が、税理士法第2条に定められた税理士が行い得る業の範囲であることに異論を唱えるものはない。
 原則、使用者から労働者に支払われる給料より、所得税が源泉徴収される。その税額は、労働者にかかる労働保険料並びに社会保険料控除後の金額から算出する。したがって、「租税債務の確定(源泉所得税額の算出)」をするためには、その前提として、労働者にかかる「労働保険料並びに社会保険料の金額の把握」は必須事項となる。加えていうなら、労働者の労働保険・社会保険の資格得喪の事実がなければ、「労働保険料並びに社会保険料」は確定されない。
 つまり、労働・社会保険被保険者の資格の得喪、年度更新、算定基礎届は、今回の確認書で明記された「租税債務の確定に必要な事務」であり、したがって「税理士又は税理士法人が付随業務として行うことができる社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務」と解される。

(3)非課税者の扱い
 給与所得金額に課税される者について、社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる種々の業務は、今回の確認書締結より税理士又は税理士法人が行い得る付随業務となった。
 それでは、少額所得者である非課税者についてはいかがであろうか。非課税所得者については、当然のことながら租税債務が発生しない。よって、この者達に対してまで、税理士が先の付随業務を行うことは許されないと考えるのが自然であろう。
 しかしながら、考えようによってはこの場合にも課税者同様、付随業務として税理士等が社労士法の業務が行いうるものと解される。
 なぜなら、所得税の源泉徴収するか否かは、あくまで労働者にかかる労働保険料並びに社会保険料控除後の金額から判断されるからである。つまり、所得税が課税される労働者同様、非課税者である事の確定には労働保険料並びに社会保険料を算出しなければ、その判断が下せないからである。
 
(4)今後の業務における影響

 これまで述べてきたように、この確認書が税理士会・社労士会双方の合意に基づき合意を見ることにより、これでこれまで曖昧としていた税理士又は税理士法人が付随業務として行うことができる社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務が、随分はっきりした。つまり、税理士が顧問先として関与している事業所の、源泉徴収税に関する業務を行っている場合、その付随業務として、毎月の給与計算、労働・社会保険被保険者の資格の得喪、年度更新、算定基礎届が扱えることになった。一方、年末調整に関しては社労士が携われないこととなった。
 では、このことにより、実際に顧問先ではどのようなことが考えられるだろうか。
 先の解釈により毎月の給与計算、労働・社会保険被保険者の資格の得喪、年度更新、算定基礎届等は、報酬を得て税理士が業として行える。当然、税理士法並びに所得税法により年末調整が行える。
 一方、社労士は、毎月の給与計算、労働・社会保険被保険者の資格の得喪、年度更新、算定基礎届等を、業として当然に行える。しかし、年末の繁忙期において事業主に代わり年末調整事務を行えなくなった。
 このような状態で、顧客が同じ業務をどちらに依頼するかを考えれば当然税理士に軍配が上がる
 結果的には、先の確認書では2(2)において「社会保険労務士法第2条第1項第1号の2の業務(提出代行及び同項第1号の3の業務(事務代理)は、付随業務ではないこと」をうたっているものの、実際には多くの場面でこれを認めたことになるのである。それは、あって無きが如しの規定であるといえよう。
 なお、労働・社会保険諸法令に基づく給付金等の請求についても、類推解釈・文理解釈により「租税債務の確定に必要な事務」と言えなくはないケースがあるものの、税理士側に有利な情報提供をここでは差し控える。


5「付随業務に関して疑義が生じた場合の話し合い」等について

  次の項目は、確認事項の第3項目である。


3 付随業務に関して疑義が生じた場合は、その都度、全国社会保険労務士会連合会と日本税理士会連合会との間で協議の上、解決を図ることとする。
  なお、年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が当該業務を行うことは税理士法第52条(税理士業務の制限)に違反する。


・業務制限の解釈
 第3項目前段において、「付随業務に関して疑義が生じた場合の話し合い」についての取扱いが記されているが、これは非常に抽象的である。これだけの定めであれば、実際には業務制限の違法性を問うことができるのは、社労士が税理士業務を行った場合税理士側からの疑義についてのみ、ということになるだろう。
 その理由は、社労士法第27条の業務制限は「社会保険労務士でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務を業として行ってはならない。」とあるため、報酬を得て行わない無償のサービスであれば、当該業務を行った者の違法性を問うことができない。一方税理士法第52条の定めによる業務制限は「税理士でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行ってはならない。」とあり、報酬の有無に関らず税理士業務を行ってはならない旨の定めがされているからである。
 つまり社労士と税理士の業際で疑義が生じたとしても、税理士が「無報酬です」といえばそれ以上の違法性は問えず、片や社労士の場合は有無を言わさず違法行為となるわけである。
 ここで再度確認しておくが、税理士及び税理士法人が、社労士法に定められる社労士業務を「租税債務の確定に必要な事務」として行うためには、税理士業務の延長上にあるものでなければならない。したがってスポットで、毎月の給与計算、労働・社会保険被保険者の資格の得喪、年度更新、算定基礎届等の業務を、報酬を得て行うことは社労士法違反であることはいうまでもない。 
 それにしても、社労士が税理士の業務制限につき、どうすれば遜色無く対処できたかを考えるに、少なくとも社労士法第27条の文言のうち、「他人の求めに応じ報酬を得て」と「業」の部分を削除すべきであった。仮にそれができないとするならば、税理士法第52条に当該文言を加える確約をさせる等、社労士法第27条と同様の表記とさせる努力が必要であったはずだ。
 残念ながら現行条文のままでは、税理士の詭弁に手も足も出せない

6「年末調整に関する事務」について

  次の項目は、確認事項の第3項目後段部分である。


 なお、年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が当該業務を行うことは税理士法第52条(税理士業務の制限)に違反する。


 第3項後段は、社労士が年末調整事務を行うことを禁じている。

 しかし、当該内容について、法律的・客観的かつ常識的にみて、整合性があるものとは考え難い。顧問社労士が給与計算を行っている顧問先事業所において、年末調整事務を行うのは職務上当然であるからである。以下、関係諸法令に基づき、理由を述べる。

(1)民法からのアプローチ
 賃金を確定するには、まず第一に、労使間で定めた労働契約や就業規則に基づく個々の従業員の労働条件(基本給、諸手当、労働日数、労働時間等)をもとに、総支給額を算出する。次に労働保険料や社会保険料を控除し、最後に源泉所得税を計算して手取り賃金額が確定することになる。
 つまり、社労士が守備範囲とする「賃金」と税理士が守備範囲とする「税金」とでは、労働の対償である「賃金」が「主」で、「税金」が「従」とする関係が成り立つ。「賃金があるから税金が発生する」のであり、「税金を徴収するために賃金が発生する」わけではないのである。 
 この「主」と「従」の関係については、民法第87条にも「主物と従物の区別」として明記されている。「従物は主物に付随する」これを理解すれば、「主」と「従」どちらが優先されるべきかは一目瞭然である。


民法 (主物と従物)第87条

 物ノ所有者カ其物ノ常用ニ供スル為メ自己ノ所有ニ属スル他ノ物ヲ以テ之ニ附属セシメタルトキハ其附属セシメタル物ヲ従物トス

2 従物ハ主物ノ処分ニ随フ


 たとえば、建物を売る契約をすれば、その際物置や建具類を売らないという契約をしない限り、それらも売ったことになる。この場合「建物」=「主物」であり、「物置」「建具類」=「従物」である。逆に、建具類を売る契約をした場合、わざわざ建物を売らないという契約がなくても、建物まで売ったことにはならない。何故なら、「主物」は建物であり「従物」が建具類であるからだ。
 こうした関係は、従物が物でなく権利である場合にも適用される。たとえば、甲が乙から土地を賃借し、その土地に建物を建てて丙に売ったとしよう。この場合反対の約束をしない限り、土地の賃借権(従たる権利)も、建物の所有権(主たる権利)と同時に、丙に譲渡されたことになる(もっとも、丙が地主乙に賃借権を主張するためには、乙の承諾またはそれに代わる裁判書の許可が必要とされる)といったケースが考えられる。
 これを踏まえた上で、賃金と税金の関係に立ちかえろう。再度確認するまでもなく、「主物」=「賃金」であり、「従物」=「税金」である。この法理を適用すれば、「賃金」を扱える社労士は「賃金」に付随する「税金」に関する業務を扱えるのである。
 したがって、年末調整を含む源泉所得税の計算は、労働の対償たる賃金の計算の延長線上にあるのであり、「賃金債務の確定に付随する業務」として、社労士の職務範囲と解される

(2)社労士法・労働基準法からのアプローチ
 社労士は、社労士法第2条各号に定められた事務を業とする。その中に、別表11があり、労働基準法第108条に基づき、賃金台帳作成事務がある。



(社会保険労務士の業務)第2条

 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。

1.
別表第1に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、異議申立書、再審査請求書その他の書類(以下「申請書等」という。)を作成すること。

12
申請書等について、その提出に関する手続を代わってすること。

別表第1(第2条関係)1.
労働基準法(昭和22年法律第49


(賃金台帳)第
108

使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。

 
 その賃金台帳には、同法施行規則54条8項により、同法第24条により賃金の一部を控除した場合は、その額を記さなければならないとの定めがされている。


労働基準法施行規則(抜粋)

54条 使用者は、法第108条の規定によつて、次に掲げる事項を労働者各人別に賃金台帳に記入しなければならない。
一 氏名
二 性別
三 賃金計算期間
四 労働日数
五 労働時間数
六 法第三十三条若しくは法第三十六条第一項の規定によつて労働時間を延長し、若しくは休日に労働させた場合又は午後十時から午前五時(厚生労働大臣が必要であると認める場合には、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時)までの間に労働させた場合には、その延長時間数、休日労働時間数及び深夜労働時間数
七 基本給、手当その他賃金の種類毎にその額
八 法第24条第一項の規定によつて賃金の一部を控除した場合には、その額


 なお、同法第24条により賃金の一部を控除できる場合として、「法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合」が明記されている。所得税を給与支払の都度源泉徴収できる根拠は、この法令に別段の定めがある場合に相当する。(その他、法令に別段の定めがある場合として、地方税法第321条の5、保険料の控除を認める健康保険法
77条、厚生年金保険法第84条、労働保険の保険料等に関する法律第31条の規定が存する。)


(賃金の支払)第24

 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。


 社労士がその職務として賃金台帳を作成する際には、各労働者の源泉所得税を記入しなければならない。にもかかわらず、例えば給与計算を行っている顧問先事業所において、源泉所得税額を計算できないことになれば、当該社労士は社労士法上の職務を遂行できないこととなる。

 また、賃金台帳の作成(労働基準法第108条)につき、事業主がこれを怠った場合(当然、必須事項を記入しなかった場合もこれに含まれる)、労働基準法第120条により使用者は30万円以下の罰金が処される。加えて、同法121条により、当該賃金台帳作成事務を代理人に行わせていた場合にも、同様に処罰されることを確認しておく。


労働基準法
120
条 (抜粋)

次の各号の一に該当する者は、30万円以下の罰金に処する。

1.
14条、第15条第1項若しくは第3項、第18条第7項、第22条第1項若しくは第2項、第23条から第27条まで、第32条の2第2項(第32条の4第4項及び第32条の5第3項において準用する場合を含む。)、第32条の5第2項、第33条第1項ただし書、第38条の2第3項(第38条の3第2項において準用する場合を含む。)、第57条から第59条まで、第64条、第68条、第89条、第90条第1項、第91条、第95条第1項若しくは第2項、第96条の2第1項、第105条(第100条第3項において準用する場合を含む。)又は106条から第109条までの規定に違反した者

121条 (抜粋)

 この法律の違反行為をした者が、当該事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為した代理人、使用人その他の従業者である場合においては、事業主に対しても各本条の罰金刑を科する。ただし、事業主(事業主が法人である場合においてはその代表者、事業主が営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者又は成年被後見人である場合においてはその法定代理人(法定代理人が法人であるときは、その代表者)を事業主とする。以下本条において同様である。)が違反の防止に必要な措置をした場合においては、この限りでない。


 以上のことから、社労士が源泉所得税の計算(年末調整の事務を含む)を行えないということになれば、賃金台帳の作成業務に支障をきたしかねず、労働基準法及び社労士法から照らしても問題が生じることになる

(3)所得税法からのアプローチ
 所得税法第183条は、給与支払者(使用者)に対し、給与支払の際、所得税を源泉徴収する義務を負わせている。また、同法190条においては、給与所得者の年末調整について規定している。これによれば、「使用者は所得税の額の合計額がその年最後に給与等の支払をする時の現況により計算した第2号に掲げる税額に比し過不足があるときは、その超過額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収すべき所得税に充当し、その不足額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収しなければならない」とされている。 
 すなわち、源泉徴収税の過不足を、労働者に支払う当該年最後の「給料等」から調整することとなり、年末調整事務による当該年の所得税額確定が、賃金台帳作成における記入事項に不可欠な要素となる。
 つまり、年末調整事務を行なった後でなければ、何人も賃金台帳の作成事務が行えないのである。


所得税法 (源泉徴収義務)第
183条(抜粋)

居住者に対し国内において第28条第1項(給与所得)に規定する給与等(以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない。


法人が利益又は剰余金の処分による経理をした賞与その他政令で定める賞与については、支払の確定した日から1年を経過した日までにその支払がされない場合には、その1年を経過した日においてその支払があつたものとみなして、前項の規定を適用する。

(年末調整)第190条(抜粋)

給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者で、第1号に規定するその年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が2千万円以下であるものに対し、その提出の際に経由した給与等の支払者がその年最後に給与等の支払をする場合(その居住者がその後その年1231日までの間に当該支払者以外の者に当該申告書を提出すると見込まれる場合を除く。)において、第1号に掲げる所得税の額の合計額がその年最後に給与等の支払をする時の現況により計算した第2号に掲げる税額に比し過不足があるときは、その超過額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収すべき所得税に充当し、その不足額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収してその徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならない。


(4)国民の利便性からのアプローチ

 次に、この問題を国民(中事業主や労働者)の立場から考えてみよう。

 源泉所得税額の計算を含めた給与計算について、前述したように、例えばまず「賃金」を守備範囲とする社労士が、当月の給与計算及び労働保険料・社会保険料の計算を行い、次に、「税」を守備範囲とする税理士へ、源泉所得税額を計算、さらに社労士が税理士からこれを引き継ぎ、労働者への支払額を確定する、という手順を踏むとしよう。
 これでは、いたずらに業務が煩雑になり、時間を浪費するばかりで、依頼者たる国民が迷惑を被るだけである。
 税理士と社労士との業務内容がバッティングする、給与計算事務(年末調整事務を含む)は、その業務の難易度からしても、両者が業務の相互乗り入れを行うことが、士業サービスを利用する国民にとって最も有益ではなかろうか
 給与計算及び年末調整事務について、税理士を選ぶか社労士を選ぶかは、国民(事業主)が決めればいいことである。

(5)結論
 前記(1)の理由(民法からのアプローチ)に照らして言うと、今回の確認書の締結により、「主」であるはずの賃金を扱う社会保険労務士業務のうち、毎月の給与計算、労働・社会保険被保険者の資格の得喪、年度更新、算定基礎届等が実質業際に追いやられ、これにかわり税理士及び税理士法人が、これらの業務に主として携われるようになったことが釈然としない。 それは規制緩和の流れの一環であると百歩譲ったとしても、社労士業務の開放がこの時期、一方的に行われなければならなかった経緯に合点がいかない。
 では、社労士が業際に追いやられず当該業務を税理士と遜色無く行うためにはどうすればよかったのか。そのためには、給与所得者にかかる源泉事務が、社労士の付随業務であることをはっきりさせれば良かったのである。
 すなわち、今回の確認書へ『「賃金債務の確定に付随する事務」は社労士法第2条各項の業務の付随として、税理士法第2条第1項・第2項の業務が行える』旨の文言を、明確に盛り込めばよかったのである。 

 また、前記(2)及び(3)の理由(社労士法・労働基準法からのアプローチ、所得税法からのアプローチ)からも、次のことが言えよう。

 社会保険労務士が業として賃金台帳を作成するには、毎月の給与計算時における源泉徴収税額の算出並びに年末調整事務は不可欠であり、これをせずして事業主を代理し賃金台帳作成事務を行えない、という事実に帰結してしまうのである。
 したがって、先の確認書中『なお、年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が当該業務を行うことは税理士法第52条税理士業務の制限)に違反する。』は、明らかに社労士法第2条へ抵触しており、仮にこれが確認書として当事者間において調印されたとしても、何ら法的効力を持たないものと解される。
 今回どのような理由で税理士には付随業務が認められ、社労士には付随業務が認められないのだろうか。ここでも、源泉所得税額の確定業務の場合同様、確認書に『「賃金債務の確定に付随する事務」は社労士法第2条各項の業務の付随として、税理士法第2条第1項・第2項の業務が行える』旨の文言を加えたならば、すっきりとした解決を図ることができたはずだ。   

 はっきり言って、年末調整は特別な専門的な知識を要するものではない。また、コンピューターのソフト会社はこぞって簡易なソフト開発に力を注いでおり、基本データの入力ミスさえなければ、誰にでも簡単に行える事務である。このような業務こそ、規制緩和により真っ先に垣根をなくす対象とすべきである。

 これに関して様々な意見があるものと推察するが、一体、給与計算の付随業務としての年末調整事務に関し、税理士法違反か否かは誰が決定を下すのであろうか。それは税理士会でも社労士会でもない。つまり権威ある場所(裁判)での明確な決定がない限りは、個人の解釈に委ねられるのであるのである。これは当たり前のことであって、例えば、隣人同士である甲と乙が土地の境界線を巡り争ったとする。どちらも自分の主張を曲げない場合、結局は裁判所の判断を仰がない限り、問題は個人の解釈に委ねられ、両者がいつまでも自分の主張を繰り返すだけのことであり、この土地問題については、両者がいつまでも自分の主張を繰り返すだけのことである。それと同様に、法的根拠にすら基づかない「確認書」なるものが、税理士会と社労士回との間に調印されたとしても、裁判所で決着をつけない限り、何ら法的効力を持たないものと解するのが当然であり、それぞれの会員が個々の解釈に基づいて業務を行ったとしても、何ら咎められるものではない。
 したがって当職らは、「賃金債務の確定に付随する事務」につき、年末調整に関する事務は、何の問題もなく社労士が行えるものと解するしかしながら、年末調整については近い将来、給与所得者本人が確定申告をすることが検討されており、あえてこの時期に、確認書へ盛り込むことが適当であるかどうかを疑問視する向きもある。

7 まとめ
 そもそも規制緩和において、「誰でもが行いうる簡単な業務」の開放は、相互乗り入れが条件とされなければならない。この機に乗じて、どこか特定の士業が一方的に開放することなく、また特定の士業が一方的に職域侵害をするようなことがあってはならないはずであった。
しかしながら、これまで今回の確認書の内容を検証してきたように、実質上社労士の多くの業務が税理士及び税理士法人に開放され、社労士には禁止事項のみが言い渡された。
 結論として以上の考察により、「賃金債務の確定に付随する事務」については「民法」、「社労士法」、「労働基準法」、「所得税法」の包括的な法解釈の見地から、社労士の業務であり、当然「年末調整事務は賃金債務確定に必要な付随業務であるから、社労士が合法的に行える」ものと解される。
 これらの趣旨から、来る6月6日に、日税連と連合会との間の覚書とし、両会の会長が覚書に調印する予定とされている、この確認書については、是非とも相互乗り入れの観点から確認書に盛り込まれる内容の再考を促したく提言するものである。                

                                 以上